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昔から
まるは戦略時代から、KEY(メンバー)のファンです。
初めて出した同人誌はONEなくらい。

11月の某イベントにはサークル参加予定。
だからリハビリ代わりに昔書いたものを加筆修正してみた。

もう10年前の作品のSSですw
元ネタ(ONE〜輝く季節へ〜)がわかる人だけどうぞ。

…ネタの運びは昔とまるで変わっていない自分に絶(ry

その全ては、一本の電話から始まった…


電話が鳴っている。
洗面台で長い髪と格闘していた瑞佳が動くよりも先に音が途切れる。母が出たようだ。
「はい、長森です。ああ、…」
その台詞から、顔見知りだとわかる。
彼女はこの電話への関心を失うと、また鏡とブラシを扱う孤独な戦いに戻る。
決してプラスにはならず、かといって下手を打てばすぐにマイナスという理不尽で厳しい戦いに。
「なんで今日はこんなに寝癖がひどいかなぁ」
夢見が悪かった覚えはないのに、と可愛らしい愚痴がドライヤーの風音に紛れていた。

「あ、今日折原君風邪でお休みだって」
「え?」
リビングに戻ってきた時に言われた、予想もしなかった母の一言に長森瑞佳は思わず固まった。

「…浩平が、風邪?」
再起動までに費やした時間は短くなかった。
思わず彼の家がある方向に顔が向き、無意識に昨日の学校での彼の様子を思い返す。
いつも無駄なまでにバイタリティを全身全霊で放出している、あの浩平である。
とてもそんな予兆は微塵にも見られない、そんないつもの彼だった。
それでなくとも、にわかには信じ難い。
10年近くにもおよぶ長い付き合いの中で、彼が病気や怪我といった事態に見舞われた記憶はほとんどいやまったくといっていいほど

ないのだから。
昔から、軽い風邪くらいなら無視して学校に行っていた気がする。
おとなしくしていることが何よりも苦痛だ、と豪語し高笑いもしていた。

…そんな彼が、わざわざ病欠の連絡まで入れての欠席である。
「浩平、大丈夫かなぁ」
元々が心配性な瑞佳がそう漏らすのは当然の帰結だった。


いつもより早い時間。一人で歩く、通学路。
それだけのこと。
「…なんか変な気分だよ」
気がつけば左隣を気にしている自分に気づく瑞佳。
一人で学校に向かうということに、これほど違和感を覚えるとは夢にも思わなかった。

朝から半ば本気で走らなくてもいい、だから楽だ。
文句を言われることも小馬鹿にされることもない、気も楽だ。
ただ、彼とのコミュニケーションが欠如しているだけ。
いつもの、どこか子供っぽい笑顔が見えない。
いつもの、個性満ちた調子よいトークが聞こえない。
喪失感が、先立って浮かべた全てを無に返す。いや、それを補ってなお余りあるだけの回答を示す、
当たり前のようにあったものが、今はない。言葉にすればただそれだけ、
でもこの空気はその言葉だけでは心が納得できる静けさではない。
1と0、たった一つの差。

その壁は、大きくて重い。


「おはよう」
教室での第一声は変わらない。
しかし、自分に向けられる視線がどこか違った。
瑞佳を見るクラスメート全てが、程度の差こそはあるが、間違いなく疑問符を浮かべていた。
それもきっと、すべてが同じ疑問を抱いているに違いない。
「あれ? 長森さん、折原の奴は?」
20を超える疑問、その初太刀はやはり住井からの切り出しだった。
「風邪でお休みだって」
瑞佳がそれだけ答えると、教室に軽いどよめきが走る。
「な、なんだってー」
「うわ、珍しい」
「…俺、今日傘持ってないんだけど」
火がついたような反応。一躍、話題の人。
窓の外を念入りに観察する輩まで出る始末。

誰の目にも、これは極稀な状況なんだとわかる。
それは同時に、このクラスでの浩平の存在というものが大きいということの裏返し。
「おーい、あのさ、“馬鹿は風邪引かない”って、アレ嘘か?」
誰かが、住井に問う。
視線が集まる。きっとその考えに至った人間は一人ではなかったのだろう。
「あー、それな。…うーん、手短にいうとだな、
折原は確かに”バカ”かもしれんが”馬鹿”ではないぞ」
親友の発した言葉は短く重く、そして的確。
「…なんとなく言いたいことはわかった気がする。難しいんだな日本語って」
僅かな発生の差異で意味を察した彼は、真面目な顔で外を見た。
遅刻ぎりぎりの生徒が駆け込んでいる校門に、話題の人が見えない今日という日をちょっと感慨深く感じながら。

「で、容態のほうはどうなの?」
「え?」
七瀬留美のその問いの意味がすぐに理解できなかったのか、即答が出来ない瑞佳。
「え? じゃないわよ!?」
「…あ、今日は寄ってないんだよ」
言われるまですっかり頭から抜け落ちていました、といわんばかりのあっけに取られた顔つきの瑞佳。
もとより嘘のつけない性格をしているのだが、輪にかけて判りやすいうろたえっぷりを疲労してくれた。
…ファンサービス過剰だと、そんな彼女を見た誰かは思ったりしたとかしなかったとか。
「え? あんた毎朝迎えに行ってるのに、また今日に限ってどうしたってのよ?」
日常を日常として当たり前に捉えているのならば、これは当然の疑問だ。
「ええとね、朝電話があっていきなり病欠とか言われてちょっと混乱してたから…」
電話とったのもお母さんだったし、とこれまた混乱っぷりを地で示している。
「…ま、たしかに珍しいこと尽くめで混乱するのはわかったわ」
あの折原が電話連絡して病欠する姿なんて確かに想像できないものね、と妙に納得した顔の留美だった。
「折原なら風邪だろうと怪我だろうとサボりだろうと関係なく全部ひっくるめて無断欠席ってカンジだものね」
「…おばさまが電話したという可能性はないんですか?」
里村茜も瑞佳に問う。
「あの時間じゃどっちかわからないよ。お母さんに電話の相手聞くの忘れてたし」
聞いたのは結論たる浩平の病欠という連絡事項のみ。
あれが叔母の由起子からの電話か浩平本人からの電話かまでを考えるほどあのときの瑞佳の思考に余裕はなかった。
「電話が出来るならそんなに重い病状ではないでしょうけど…」
茜はそこで言葉を止めた。
折原浩平という人物が、自分たちの知る常識では掴めない事がたびたびあることは実体験で嫌というほど見知っている。
「軽いならわざわざ電話なんかしなくても、いつもどおり迎えにくる瑞佳に伝えるほうが楽よね、普通に考えたら」
茜の言葉尻の空白を察した留美も、難しい顔になる。
「とりあえず、放課後はお見舞いかな?」
「そうね」
「…行きましょう」

…言葉だけ聞けば、友人を見舞う麗しき友情劇だ。

が、見るものが見れば判るだろう。そしてこう告げるだろう。
「火花が見えた。あれは絶対互いに互いを警戒して警告してる」
要約すれば…ぬけがけするな、と。
この一言に尽きる。
…年頃の女の子とは、難しいものである。


「…なぁ、なんかあそこの空気おかしくね?」
「バカ、見てんじゃねえ。目があったら殺られるぞ」
一部敏感な輩はしっかりと第六感を働かせ生命の危機から逃れようとしていた。
「で、俺らはどうするよ?」
問われた住井はうーん、と少し考え込む仕草を見せてから、
「俺はとりあえずなんか見舞いの品持って顔出すわ」
「何持ってく?」
くだもの籠は高いぞ、という半笑いの突っ込み。
「食い物の類なら長森さんたちが多分持ってくだろうから、…別のもんにするのが吉だろーな」
「…ああ、俺らじゃないと持っていけないヤツ、か」
住井が刹那浮かべた薄笑みに気づいた一人が、呼応するように軽く唇を歪めた。
「友情は大事だぞ、うん」
「やっぱ男の友情は不滅だからなー」
言葉にし難い不可思議な笑みが、空気を触媒に周囲に伝達していく。
…こういうときの男同士の相互理解力と団結力は特筆モノだ。
「ちょうど最近ちょっとイイモノ仕入れたんだよ」
「前に話題になったアレ、実は今あるんだよな」
…そう、彼らは至って健全な年頃のオトコノコ。


授業中。
教師の説明の声に、黒板に白墨が走る音。ノートがめくれ、ペンが走る。
なんの変哲もなく授業が進んでいく。
それは本来誰もが望むことであり、異論を挟むことではないはず。
が、誰しも口にこそ出さないが、どこかしら違和感…というよりは何か、言葉にし辛い引っ掛かりを感じていた。

静か過ぎる教室に。

確かに誰も余計なお喋りをしてないわけじゃない。
居眠りする生徒が一人もいないわけじゃない。
見れば住井はいつもどおりに内職に忙しそうだ。
次の時間にもなればきっと怪しげな一片の紙片が男子生徒の間を徘徊するのだろう。
そしてなにやら一騒動が起きる事だろう。

けれど誰もがはっきりと思っていた。
今日の教室はどこか静か過ぎると。

ときたま誰かの視線が横に走る。多分このクラスの生徒は、例外なく一度は同じ行為をしたかもしれない。
ある場所に視線を投げるという単純すぎる動作を。

窓際後ろの…空席に、その席の主の姿を探して。

いつもいつも物語の中心に踊り出る男は、たとえ居なくても話題の中心に駆り出されるらしい。忙しいことだ。


「……」
留美はどこか落ち着きのない空気を、この静寂から受け取っていた。
授業への集中を妨げる理由がどこにもないという恩恵と同時に。
(…なによ、コレ…)
板書を模写するペンの動きが、不意に止まってしまう。
…その理由はわざわざ考えなくても判っていた。
つまりこれは、判っている故の…困惑。
(…何よ何よ、もしかしてアタシってどっかおかしいの?)
心の声で疑問を強く叫んでみても誰も答えるわけはないのだが、授業中なので誰かにぶつけに行くわけも行かないからこその叫びかも

しれない。
(…っ、ああもう!)
ついに我慢しきれなくなったのか、視界が大きく動いた。…ご自慢のツインテールを大きく翻しながらの行為ということも気づかない

で。
…その先には誰も居ない。
いつもならば、放っておいても向こうから多種多彩なアプローチを持って時と場合を問わず侵攻を仕掛けてくる、でもどこか憎めない

笑顔も併せ持つ彼は、今居ない。
今日の彼の手腕はいつに無い新手の搦め手なのかもしれない。
わざと自分を配置しないことで新たな効果を生み出す…
(…ってなにを考えてんのよアタシってば!?)
いつの間にやら怪しい方向へ思考誘導されたことに気が付き、留美は慌てて頭を大きく左右に振ることで思考を打ち消す。
すると次に浮かぶのは…浩平の笑い顔だった。
こんな自分を見て、腹を抱えて笑っている。
なぜか寝巻きのまま、ベットの上で枕を叩いて笑っている姿が目に浮かぶ。
「…とりあえず見舞いの品は拳骨でいいかしらね?」
見舞いにはまったく場違いな過激な単語が口から飛び出す。
…いつしか彼女の右手はペンを放り捨て強く硬く握りこまれていたという。

留美が想像の中の浩平へ哀と怒りと悲しみの輝ける拳を振り上げているのと同じ時。
「…そういえば、今日は詩子も来ていないんですね」
留美のいる窓側とはちょうど正反対になる廊下側の席にいる茜はいつもどおりに授業を受けていてふと思い出した。
気が付けばこの教室に潜り込んでいる他校へ通っているはずの親友のことを。
…これを彼女が知ったら「うえぇ、茜が冷たい」と泣き付くだろうが。
「…どうりで妙に静か過ぎると思ったわけです」
いつのまにやらそれが当たり前だと自分の中でカウントしてしまったが、
(これが本来なら普通なんですよね)
と、慌てて修正を入れる。
(…詩子も早く気が付いてくれるといいんですが…)
そう思っては見るものの、心のどこかではそれがまったく無意味であると諦めの境地が訴えている。幼馴染は伊達ではない。
「……」
ノート取りがちょうど一段落したところで、茜は軽く静かに顔を左に向けた。
茜の位置から左を向けば。教室の大半が視界に入る。
住井は無造作に畳んだ紙片を近場の男子生徒に向け放り投げていた。
瑞佳はノートをしっかり見直して写し間違いや歯抜けがないか確かめていた。
…留美は奇妙というか、どこか恨みがましい視線を後ろへと放っていた。
(…? 七瀬さんは何をしてるんでしょう?)
さすがにその態度は茜に疑問を抱かせるには十分すぎる力があった。
留美の視線の先にあるのは…浩平の席、…でも今はただの空席。
(…ますますわからないです。なんで浩平の席を睨む必要があるんでしょう? 本人に向けてなら判らなくはないんですけど)
あまり他人のことには関心を向けないはずの茜だが、さすがにこれは気になるようだ。
(…次の休み時間に聞いてみましょうか)
彼女はまだ気づいていない。
いつもなら考えもしないようなことに頭が働いていることを。
この何かどこか足りない空気の影響を知らずに強く受けていることを。


昼休み。
男子生徒が4限終了のチャイムと同時に教室を駆け出していく。購買と学食を目指して。
それはどの学年のどの教室でも変わらない光景。
「勝利!」
見てるものが思わず惚れ惚れしそうなくらい見事なまでのスタートダッシュを決めてから5分足らず、
戦利品を抱えて住井以下男子数人がほくほく顔で教室へと戻ってくる。
「折原居ないと結構辛いな」
「あいつ窓際の癖に教室出るの早いんだもんな。いつ席飛び出してんだ?」
…どうやら共同戦線での購入らしい。それは購買での激戦模様を暗に物語る。
「明日はちゃんと来て貰わないとな。一人欠けるだけでこんなに厳しいとは思わなかった」
…よく考えるとかなり物騒な会話である。
が、これが彼らにとっての日常なのである。

「で、放課後どうすんの?」
「え? どうするってどういうこと? お見舞いでしょ?」
「…何か展望でもあるならもう少し具体的に話してくれませんか?」
三人で弁当を広げてのランチタイム。
留美の問いに、意味を理解できない瑞佳とあっさり切り返す茜。
「あ、そういうことか」
納得したといわんばかりに、ぽんと手を叩く瑞佳。
「……このまま直行? それとも一度家に戻ってから行く?」
「えーっと、どうしようか?」
留美からの問いかけは単純なようで、そのくせ実は深い。
そして決して、男には判らない謎かけ。
「…お見舞いの品次第ですか?」
「くだものなら普通に商店街のスーパーで買えるしね」
「こうなると折原の状況が判らないのが辛いわね」
「…そうだね。食欲とか冷蔵庫の中の様子とか知らないと持っていくものも変わると思うし」
…これはとても生々しい会話である。
根付いた生活感に溢れている所は好感高し。だがある意味、とても女子高生の会話とは思えない。
「…あそこ、なんかすげえ会話してない?」
「…気にするな。したら負けだ。それはきっと男には判らない世界の話なんだよ。異世界だ異世界」
近場で昼食を取っていた男子生徒のグループではどこか背中に戦慄を覚えていた。
「…俺はうらやましくなんか無いぞ」
「そんな上ずった声じゃ説得力無いぞ」
「そんなんじゃないやい」
年頃の男の子なら当然の感想である。
「…アレよりはましだろ?」
「…アレと一緒くたにするのはさすがに可哀想だからヤメレ、仮でもなんでもないダチだろ俺ら?」
そんな一人が指差す先には…

「くそー折原の野郎! 里村さんをよくも手篭めに…」
いつのまにか本名よりも通り名が有名な男、沢口もとい南が、まさに滝のような血涙を流していた。

「さすがに沢口のアレはどうかと思うぞ…」
紙パックのジュースについているストローをタバコのように咥えながら住井は漏らす。
「ま、傍観者でいるのが一番冷静ってか正しい気がするぞ。もうここまで来たらな」
「…あいにく俺はまだ関係者だが」
なぜかどこかに皮肉のようなものを感じさせる住井の一言。
「あんまりイジめてやるなよ?」
「折原がその程度でまいるタマか?」
「そんなワケない」
大きな声で即否定、大きく首が左右に動いて。
「ヤツは世界が核の炎で包まれても生き残る」
「アイツこそがきっとニュータイプ」
「うん、折原がガンダムだ」
男子の間で笑いが生まれる。
そのあまりの大きさの渦に、女子の注目が集まるが、ツボにはまったのか火がついたのか。
彼らの笑い声はしばらく止まらなかった。


「…なにがあったんだろうね?」
「箸が転がっても面白い年頃っていうことでしょうか?」
「…それよりもアタシは沢口の方が気になるって言うか、歓迎したくない雰囲気なんだけど」
「…放っておきましょう。なんだか不愉快なんです」
「うーん、たしかにあまり今の沢口君には関わりたくないよねぇ」
「触らぬ神に祟りなし、か」

…ああ、いと哀れなり。 沢口。

午後の授業もあっという間に流れて…
気が付けば六限目、今日の最終授業である。
担任の通称・髭こと、本名・渡辺重雄教諭が教科担任。そのまますぐSHRに移行するので生徒にとってはありがたい編成だ。
「…んあー、住井はどうした?」
名前を呼ばず、空席状況で出欠をチェックしたのか、髭が皆に問う。
「え? 住井君居ないの?」
そう言われて初めて気が付いたのだろう。女子数人が慌てて住井の席を見るが、確かにそしてすでにもぬけの殻。
「なんか具合が悪いとか言って帰りましたよー」
近くの席の男子生徒が気の抜けた声で報告する。
「んあー、わかった。それでは授業を始める。教科書の――」
髭はそれで納得したのか、あっさり話を切り上げ授業に入る。
「…? 住井君どうしたんだろう?」
席が近くである瑞佳はちらりと空席になった彼の定位置に目をやる。
「具合が悪そうには見えなかったんだけどなあ」
昨日の浩平と一緒なのかな? などとのんきに構えていたりする。
「…単にサボリ? にしては中途半端な時間に消えるもんね。アイツも何であんなに無駄にバカで忙しい人生送ってるのかしら。折原

と気が合うのはある意味で必然?」
同じように空席を見ながらも、留美は少し深く考えていたりする。
「…なんだか嫌な予感がするのは気のせいでしょうか?」
茜に至ってはある意味ものすごいことを呟いていたり。
…彼も意外と苦労人?

放課後が訪れるのはそれからすぐだった。
思い思いに散っていくクラスメートたち。
教室はすぐに閑散としてしまう。
瑞佳たち三人も、素早く教室を後にしていた。
「じゃあ、一度家に帰ってからね」
「…どこで落ち合いますか?」
「商店街の入り口でいいんじゃない?」
気が付いても付かなくても、早足で校庭を抜け校門をくぐり、あっという間に三人にとっての帰路の岐路。
取り決めは瞬時に処理され、三人はそれぞれ別の道へと分かれていく。

少しの時間が過ぎて…

商店街の入り口。
そこから見える世界は、ただ圧巻というべきか。
さすが平日の夕方というべきか、買い物する人の数が違う。
主婦を筆頭に様々な人が道を行き交い、左右に立ち並ぶ店々へと足を向ける。
喧騒が赤みを次第に強めていく空へと立ち上っていく。

「あれ」
「あら」
「…あ」
どこか間抜けていて小さな声が、ざわめきの間隙を通り過ぎた。
ほとんど同時に三人が顔を揃えた。
慌てて駆け込んできたわけじゃない。
髪も呼吸も服のすそも、ちっとも乱れていない。
それは、あらかじめ入念に打ち合わせされたTV番組の収録ではないかと疑うくらいに奇麗に足並み揃えたタイミング。
「…なんていうか、タイミングばっちりじゃない」
「…あはは、気があうねー」
「…偶然って怖いですね」
どこか余所余所しい、第一声の重なり。
「「「……」」」
そして沈黙が降りる。
周囲の人が波という流れを作りすぎていく中、アーチの前で固まる私服の女子高生三人。
見た目も悪くないどころか、逆に目を引く容姿だ。
はっきり言って、浮いている。
ややあってその事実に気づいたのか、小さく「行こう」との声と共に三人は人の流れに溶け込んでいく。
「で、何持っていこうかしらね?」
「とりあえず水分と栄養補給が出来るものかな」
「あと薬もあったほうがいいと思いますね」
…誰も他人の買い物途中の会話など気にも止めないからまだいいようなものの、正直言って違和感がバリバリ伝説な会話が三人の間で

行われている。
どう考えても、放課後に私服の女子高生の集団がする会話ではない。正直色気もかわいげもあったものじゃない。
偶然そんな彼女たちを見つけてつい目を奪われてしまったウブな中高生男子が想像もしないような生活観溢れる地に足ついた会話が、

真剣な顔でなされているのだ。

…これはいったい誰が罪作りなのだろうか?

スーパーで食品を見るその眼力と手さばきは、かけだしの主婦では太刀打ちできないほどに洗練されていた。
本来なら『三人寄れば姦しい』だろう年齢の少女たちなのだが、今はまさに『三人寄れば文殊の知恵』状態なのだろう。
品だしアルバイトの大学生らしい兄ちゃんが、その場慣れしているとしか思えない燦然とした態度に尊敬の念を抱いていた。
スーパーを出て、某チェーンのドラッグストアへと今度は足を運ぶ。
「風邪薬ってどれがいいのかな?」
「喉飴とかうがい薬もあったほうがいいのかしらね」
「…浩平の普段の生活によると思うんですが…」
茜と留美が左右から同時に瑞佳へと注目する。
「もともと健康優良児だと思うし…昔から薬とかは好きじゃないよ」
苦いお薬がダメ、とかいうのはないけどね、と苦笑いしながら瑞佳は言う。
「当り障りがなさそうなもの選んでおけば無難ってことね」
「じゃあ、このあたりでいいですね」
あっさりと選別を終えると、今度は自分個人用の品をいくつか物色してから店を出る。

浩平の家へ向かう途中。
「…ねえ、二人とも」
ちょっと聞きたいんだけど、と続ける瑞佳に、
留美と茜は?マークを浮かべて顔を向けてくる。
「…何かいい匂いがするんだけど、シャワー浴びてきた?」
「「!!?」」
顔を赤らめてわずかに後ずさり。
その態度が、肯定をはっきりと示す。
「……」
複雑そうな笑みを貼り付ける瑞佳。
「か、仮にも男の家にいくのよっ!? これは乙女として最低限の礼儀と身だしなみってものよ!!」
「…でも、長森さんも同じですよね?」
茜はやや遅れながらもその事実に気づいて反撃する。
「「「………」」」
三対の視線が絡み合う。
「考えることは皆同じってことね…はぁ」
「あはは」
「…笑い事ではないと思うんですが」

こうして気づけば、『小坂』の表札は目の前だった。

続きはWEBで 


author:まる, category:SS, 23:34
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Comment
非常に懐かしい作品ですね。かって葉鍵系に染まってた頃にコミケでそちらの作品を纏め買いした際の一つにありましたね。(今でも時々読んでます)
時は流れジャンルは変わってもこうしてまるさんのSSが読めるのは嬉しい事です。
という訳でユー×なのの新しいSSが早く読みたいです(笑)
はぐれメタル, 2008/09/07 12:10 AM









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